夏本番! 安全で楽しい富士登山を!!③マナー&ルール・緊急対応編2

こんにちは! 富士山レンジャーです。
前回の③マナー&ルール・緊急対応編1の続きです。

[マナー&ルール・緊急対応編]
4. 山小屋(吉田ルート)での注意点

・まず前回の同編1に記したとおり、富士山5合目以上は「特別保護地区」であり、自然公園法で厳格に守られています。そのため、幕営禁止(テント設営禁止)となっています。御来光を見るために9合目や山頂でテントを張る登山者が時折いますが、違法行為です。きちんと山小屋に宿泊して下さい。

・沢の無い富士山の山小屋では、水は非常に貴重です。また同様に"スペース"も非常に貴重です。そのため7合目以上の山小屋では程度の差はありますが、殆どの場合、寝床は非常に狭く、寝袋分のスペース(布団の縦半分位)しか自分のスペースはありません。山小屋に着いたらまず自分の荷物を整理して、夜中にガサゴソしないで済むようにしましょう。
また、疲れたからといって山小屋に着くなり寝てしまうという人もいますが、高山病予防の観点からあまりお奨めしません。寝ると呼吸が浅くなってしまうため、まだその標高に体が順応していないうちに寝てしまうとかえって高山病に掛かり易くなってしまいます。体は休めますが、荷物整理をしたり、景色を楽しんだりしながら、(深呼吸するなど)呼吸を意識して過ごすのが高山での過ごし方のコツです。

・夜中はなかなか眠れないことが多いです。特に富士山が初めての人はドキドキしているし、狭くて鼾がうるさく、また位置によっては小屋の電球が夜中じゅう点けっ放しで眩しかったり、慣れた布団の環境とはほど遠いので睡眠不足となり、それが祟って翌日高山病になってしまうことがよくあります。不安な人は耳栓やアイマスクを用意しておくと良いかもしれません。

・御来光を山頂で見たいという人が圧倒的に多いので、山小屋の標高にもよりますが、大体深夜の2時頃にはみんな起きだして準備をし始めます。但し、「みんな起きているのだから、多少煩くても問題無いだろう」と大きな音を立てるのはマナー違反。山小屋でゆっくり御来光を見て、それから登頂を目指す人もいます。先述のとおり睡眠不足は高山病の元。ご配慮願います。
特に耳障りなのが、レジ袋のクシュクシュ音。富士山以外の山小屋でもそうですが、注意をしましょう。

5. トイレチップについて

富士山の5合目以上にあるトイレは、山小屋も、山頂や登山道の公衆トイレも全て「環境配慮型」です。牡蠣殻などを用いた分解型や燃焼型など様々なタイプがありますが、どれも維持管理費がとても掛かるため有料です。(山頂公衆トイレ=300円, それ以外=200円(山小屋宿泊者の場合はその山小屋のルールに従って下さい)) 小銭を準備しておきましょう。
なお、富士山の保全協力金はトイレの新設・修繕に使われる事はあっても日常の維持管理には使われません。トイレチップが維持管理には欠かせませんので、ご理解とご協力をお願いします。

6. 高山病に掛かってしまったら

高山病の予防の観点では既に書いていますが、もし高山病に掛かってしまったらどうするか?
高山病になるとめまいや頭痛、吐き気がします。無理せず、一旦登るのを中断して深呼吸をしたり、水分を補給するなどして高度順応を図って下さい。特に女性の方でトイレが近くなると嫌だからと水分を摂らないで頑張る人がいますが、高山病対策には水分補給は不可欠です。
もし暫く経っても一向に症状が改善しないようなら、一旦高度を下げ、必要なら下山も覚悟して下さい。高度を下げれば血中酸素濃度は上がり、大抵の場合は治ります。とにかく無理は禁物です。山は逃げませんから、登頂に固執せず、またの機会にチャレンジしましょう。

7. 突然の雷雨あるいは噴火に見舞われたら

上りの登山道ならとにかく近くの山小屋に避難して下さい。下りの下山道には山小屋はありません。連絡道を使って上りの登山道側に行くか、もしくは8合目と7合目の中間地点にある緊急避難所に避難して下さい。7合目よりも下の場合は登山道上にあるシェルターに避難して下さい。7合目より上の下山道で緊急避難所等への避難も困難な場合、下山道でも谷側ではなく山側でなるべく背を低くして身を隠して下さい。
慌てず、携帯ラジオ等で情報収集しながら慎重に行動して下さい。
七合目緊急避難所.jpg

8. 傷病者が発生したら、仲間とはぐれてしまったら

安全対策現地連絡本部(5合目総合管理センター内)に連絡下さい。
0555-72-1477 (開山期間中 24h対応)
その際、現在地をスムースに伝えられるよう、山小屋の名前や近くにある標識のナンバーを確認しておくと良いでしょう。
傷病者の場合、5, 7, 8合目にある救護所(開設期間に注意)で対応可能であれば、そこでの処置となりますが、無理な場合、クローラー(運搬車)で5合目まで下ろし、そこから救急車で搬送となります。富士山は気流が安定しない為、ヘリ搬送は基本的にできません。また、クローラーでの搬送も台風や大雨の場合には出動できない場合もあります。時折揉める事がありますが、クローラー搬送は有料です。予めご承知おき下さい。
クローラー.jpg

どうでしたか。後半はもしもの話だったので、少し不安に思ったかも知れませんが、もしもの時はどうすれば良いかも含めて理解しておくと、より安全に山を楽しめると思います。
最後に是非しっかりと事前準備をし、安全かつマナー&ルールを守って、富士登山に臨んで下さい。思い出に残る素敵な山旅となる事を富士山レンジャー一同祈念しています。

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