夏本番! 安全で楽しい富士登山を!! ③マナー&ルール・緊急対応編1

こんにちは! 富士山レンジャーです。
安全で楽しい富士登山をしてもらうため、数回にわたって夏の富士登山で注意したいポイントをお伝えして来ましたが、最後はマナー&ルール・緊急対応編です。実際に登山に臨まれる際に、ぜひ頭の片隅に入れておいて頂きたいと思います。

[マナー&ルール・緊急対応編]

1. 必ず山行計画をメンバー全員で共有しよう。

富士山登山ルート
https://www.camp-outdoor.com/tozan/fujisan/fujisanmap.pdf

富士山の4つの登山道はガイドラインで案内地図や標識等で色が決められており、吉田ルート(黄)須走ルート(赤)御殿場ルート(緑)富士宮ルート(青)となっています。必ず登山に参加するメンバー全員が何色のルートを登り、どこに泊まり、どのような行程で行くのか理解しているようにして下さい。
時々、パーティの中で登山の企画者だけがルートや行程を把握し、同行者はただ「あの人にくっついて歩いて行けば良い」と思っている人たちに会う事があります。酷い時には、行きの車で寝ていて何処の登山口から登ったのかも覚束ないというケースもあります。必ず出発前に今一度、山行計画をメンバー全員で共有しましょう。

2. 富士山5合目以上は「特別保護地区」です。

富士山に足を踏み入れる前にぜひ認識しておいて欲しいことがあります。富士箱根伊豆国立公園に属する富士山は、自然公園法によって五合目以上と青木ヶ原樹海が「特別保護地区」に定められ、ここでは動植物の採取・捕獲はもちろんのこと、落ちている熔岩などの岩石や枝なども環境大臣の許可がないと持ち出すことは出来ません
よく「生きている動植物を取るわけじゃない。落ちている石ころ一つ取って何が悪い」と言う人がいますが、富士山は開山期間中の8合目以上への登山者だけでも、年間28万人もの人が訪れます。5合目までの観光者も含めたらもっと多いでしょう。想像してみて下さい。これだけの人が「自分一人くらい、石ころ一つくらい」とみんなが好き勝手に石や枝を持ち去ったら...。それが何年もずっと続いたら...。たった一人にとっては「これくらい」の事でも大勢の人が同じことをしたら、あっという間に富士山の環境は変えられてしまいます。だからルールがあるのです。
ぜひ、富士山の自然環境を守る意識を持って富士山に臨んで下さい。

3. 登山道(吉田ルート)での注意点

・吉田ルートは、6合目穴小屋の登下山道分岐から上は上りと下りとでルートが違います。上りは7合目より上には山小屋が点在し、水の購入やトイレに行くことが可能ですが、下山道は本8合目/ 下江戸屋の分岐から7合目公衆トイレまで、トイレは無く、また水の購入に至っては、5合目スバルラインに帰り着くまでありません。♪行きはよいよい帰りは... とならないように必ず下山前にトイレを済ませておくこと、下り分の水を確保しておくことを第1に覚えておいて下さい。

・2点目ですが、下りルートでは一箇所、絶対に間違えてはいけない分岐があります。それは先述の本八合目/下江戸屋にある、須走口と吉田口との分岐です。吉田口(スバルライン)に下りたいなら、左に曲がり下江戸屋の前を通過して下さい。須走口(ふじあざみライン)に下りたいなら、右に曲がってそのまま下って下さい。もし何人かで登っているなら、必ずここで一度全員集合して、確実に全員が同じルートで下りられるようにすることを強くお奨めします。
下山道下江戸屋分岐.jpg

・ルートに関してもう1点。8合目太子館や白雲荘、本8合目トモエ館の所等には、ブル道である下山道から山小屋への物資供給の為の連絡道があり、下山道とのアクセスが可能です。途中で登山を断念する際、また下山中にアクシデントがあり救護所に行く必要がある時等に使えます。
但し、全てのブル道が通行可能という訳ではありません。人とのすれ違いに十分な道幅が確保できない等の理由から立入禁止になっているブル道もあります。心配な場合には山小屋に確認するようにしましょう。
また、連絡道や下山道でクローラー(運搬車)とすれ違う事が稀にあります。その場合は、クローラーが一旦停車して山側を通り抜けるのが基本ですが、道の状況等もあるので、運転者の指示に必ず従うようにして下さい。

・4点目はヘルメット着用の推奨です。上りでは7合目花小屋以降岩場が連続します。また頂上のお鉢巡りおよび下山道では落石や転倒の危険があります。「噴火のためのヘルメット」と確率の低いリスクへの対応と思われがちですが、現実的に起こりうるリスクへ対応するため、着用をお奨めします。(最低でも即座に出せるようにしておきましょう)
装備編2でも書きましたが、6合目安全指導センターにてヘルメットの貸出しもあります。合わせてご検討下さい。

・5点目は上りでの岩場についてです。前述のとおり、7合目以降岩場が連続しますが、岩場の両脇にはロープが張られています。これは登るのを補助する為に付いているのではなく、登山道の内と外の境界を示すためのものであり、体重を掛けると抜けてしまう危険があります。岩場を登る際にはロープに頼るのではなく、しっかりした岩を選んで、掴んで進むようにしましょう。
また、基本的に登下山道は分かれているので、下山者とすれ違うことは少ないですが、8合目より手前で断念して引き返す人たち等、たまに下山者と岩場ですれ違う事があります。そんな場合は、互いに譲り合って上手に行き来しましょう。

・最後も重要な点ですが、夜間の懐電歩行です。御来光前に山頂を目指す際にヘッドランプを点灯させるのは当然ですが、シーズン中は混み合い、9合目付近では渋滞が発生します。はやる気持ちは分かりますが、吉田ルートではどこからでも御来光を拝めるので、「最悪、山頂で御来光が見れなくてもいい」という心のゆとりを持ちましょう。焦るあまり、無理な追い越しをしたり、ましてやルートを外れて斜面を直登するのは大変危険な行為なので絶対にしないで下さい。

③マナー&ルール・緊急対応編2に続きます。

詳細はこちら: http://www.yamanashi-kankou.jp/blog/2018/08/post-1565.php